2020

株式会社西武ホールディングス 新本社ビル ダイヤゲート池袋|作品設置|2020.7.3-

ダイヤゲート池袋エントランスロビー2F

Photo|桜井ただひさ

untitled

2015

株式会社西武ホールディングスの新本社ビル、ダイヤゲート池袋に作品が設置されました。

当所はパブリックスペースなのでどなた様も作品をご覧いただけます。

 

 この作品は樟の丸太を板状にし、チェーンソーと鑿で、縦と横に刻み彫るという制約を持たせ制作をしたレリーフ作品です。原生林など、あまり人の手の加わっていない森の木々を見に行くと、一本一本の樹があらゆる方向に湾曲し、自然本来の力を感じるものです。しかしよく見てみると、樹の本質的な力の方向は湾曲した方向ではなく、縦と横の直線に働いているのがわかります。縦と横に刻み彫るという制約を持たせたのはそのためです。その樹を育てる環境で、上から降りそそぐ光や重力、雨や風などあらゆる方向から力が加わり、それらの要素が重なって一本の樹を育てます。その、樹に降り注ぐものたちを線に捉えて、この一枚の樟の板に刻んでいきました。線は時間、線は人であり道、重力であり風であり、あらゆる要素を持っています。一方向だけでなく多方向からやってきて、それは交じり合い空間、高さ、深さが起こり、かたちを生み出しています。 

 

髙山瑞

 

髙山氏の木彫が魅力的なのは、近代彫刻の流れを脱し、極めて原初的な彫り刻む原点を表しているからだと思う。縄文というとなにか過去の浅薄な流行が頭をよぎるが、ロダンから始まる近代をはるかに超えて、縄文としか言いようのない太古の感覚が宿っている。樟にはじまり樟に終わると称されるその材質にもよるのであろう。一方で、幾つかの作品には、その中央にぽっかりと穴が空いている。今を生きるわれわれの心の隙間のようにも見え、またその穴の向こうに未来への思いが見えるようでもある。原初性と現代性が編み込まれた作品だからこそ、優れて普遍的な彫刻としての強さが感じられ、見るものの心に響くのである。 

 

美術史家・平塚市美術館学芸員 勝山滋